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【水辺の挑戦者たち 第1回】柏木利徳さん

2016.06.29
水辺の挑戦者たち

自然再生センターに縁のある、中海・宍道湖に向き合って暮らす方々を紹介していくこのシリーズ、記念すべき第1回は、柏木利徳(かしわぎ・としのり)さんにご登場いただくことになりました。


◆取材は、穏やかな中海の上で


センターのFaecBookページなどでも良く顔を出していただいている柏木さん。現在は、中海に浮かぶ生まれ故郷の大根島(島根県松江市八束町)で、農業と漁業を営んでおられます。取材をさせていただいたのは、5月中旬の晴れた日の朝。柏木さん所有の漁船に同乗させていただき、4年ほど前に仕掛けたタコ壺を回収する作業にご一緒させていただきながら、お話しをうかがいました。私も、過去に定置網などの回収には立ち会ったことがありますが、タコ壺回収は初めてで、ちょっとテンションがあがります。

波があると船が固定しにくく、今回のような作業は大変なのだそうですが、今日は嬉しいことに中海も穏やかで、タコ壺を沈めたスポットに到着すると、さっそく回収を始める柏木さん。長さ200mほどの仕掛けに、5mおきにタコ壺が仕掛けられているので、1本の仕掛けには40個ほどのタコ壺がぶらさがっていることになります。それが2本ですから総数80個のタコ壺! 柏木さんのタコ壺は、ハンドメイドのオリジナル。お椀の形に固めたコンクリートを、2つ重ねるような仕組みになっています。ちょうど、二枚貝の貝殻のような感じですね。タコはその2つのお椀を上手にあわせて、その中で産卵するのだと聞きながら、引上げあげられるタコ壺を待っていると・・・「いたーー!」 確かにコンクリートのお椀を上手に閉じて、その中にビッシリと産み付けられた卵とお母さんイイダコが! すべてのタコ壺に入っているわけではありませんが、そこそこの確率で手のひらほどの大きさのイイダコが、潜んでいます。実際のイイダコ漁は、4月いっぱい頃までがシーズンだそうで、こうして産卵するまでに収穫するのだそうです。本来であれば、この時期に引き上げることはないそうですが、4年も沈めっぱなしの仕掛けをメンテナンスするために、今回は特別に引き上げるということでした。

慣れた手つきでタコ壺からイイダコを引きはがす柏木さんに、いろいろとお話しを聴いてみました。


001-02_柏木氏編_イイダコ

◆中海の今を伝えてくれるメッセンジャー


2009年、勤めていた会社を退職後、実家の耕作放棄地をなんとかしようと準備を進めていた頃、当時のセンターの理事を通じて、理事長、事務局長(当時)と出逢ったのがセンターとのなれ初め。中海とその周辺地域を舞台に、循環型社会を作りたいと考えるセンターの活動と共鳴する部分が多く、その場で会員になっていただいたそうです。「思えば、今、力を入れている”ボタンの里のみつ芋”も、センターさんの企画がきっかけでしたね」と柏木さん。センターが主催した八束学園の子供たちとの芋の栽培・収穫体験に関わったことで、”芋”の持つ可能性を直感したのだそうです。現在は、同町の安倍健一さんと共に、大根島ブランド芋としての”ボタンの里のみつ芋”の普及に力を入れておられます。

センターが中海漁協と協力して取り組む活動のひとつ、赤貝の養殖事業でも柏木さんの役割は大きく、地元の漁師さんたちとの間に立って、中海の赤貝復活に向けて、気の遠くなるような養殖工程の面倒を見ていただいています。また、センターが2カ月に一度、開催している「中海・宍道湖の食を広めよう会」では、開催の初期からずっと、柏木さんが直前に収穫した野菜や、魚貝がテーブルに並びます。センターにとっては、柏木さんは、四季折々の、暮らしのすぐそばにある中海の今の姿を伝えてくれる大切な存在です。


001-03_柏木氏編_赤貝&鱸

◆大根島を元気にする仕掛け人


柏木さんは農業、漁業の合間に、様々な取り組みをその先頭に立って推し進めておられます。関わっている団体の名前をざっと書き並べてみると、「大根島の農漁業を考える会」「八束の明日を考える会」「八束桜の会」「大根島産直市運営委員会」「大根島産直市推進の会」「中海漁協入江赤貝事業部」。これらの団体すべてに、代表、役員あるいは事務局として重要なポジションを担っているというから、驚きです。農業のプロ、漁業のプロではあっても、商品のプロモーションや、交渉をしたり書類を書いたりといった事は苦手な人が多いので、柏木さんが前職で培ってきた様々なビジネススキルが、農家さん、漁師さんにとても頼りにされているのです。これらの団体を「ウィーラブ大根島プロジェクト」の名の下にまとめあげながら、大根島の抱負な資源を育て、アピールするための様々な取り組みを行う柏木さんは、いわば大根島を元気にする仕掛け人といえる存在です。


◆大根島と中海の未来のために


各種の取り組みの中でも、柏木さんが最も力を入れて取り組んでいるのは、耕作放棄地の有効活用。半世紀前までは、特産品の高麗人参や牡丹の畑でいっぱいだった大根島も、景気低迷やマーケットの変化、専業農家の後継者不足、高齢化などの事情で、耕作放棄地が目立つようになってきました。平成26年度の松江市の資料によれば、八束町の全耕作地面積364haに対して、約5%が耕作放棄地になっているというデータがあります。
耕作放棄地予備軍の畑も多く、それを含めると作付けされていない畑は約30%になるではないか、という声もあるそうです。そんな耕作放棄地を譲り受け、荒れた畑の整備や、大根島特有の「黒ぼく土」と相性のいい、中海の海藻(オゴノリ)を使った肥料の普及、大根やみつ芋、蕎麦など新たな大根島ブランド作物のプロデュース、それらを直売する産直市の運営実施、団塊の世代をターゲットにした後継者育成など、多角的な視野で、大根島の農業再生に挑まれています。今後は、若い世代の後継者づくりも視野に入れた活動にも力を入れるそうです。「まだまだ大根島は元気になりますよー!」と陽に灼けた顔で笑う柏木さんが、私にもとても頼もしく見えました。(取材・撮影・文:桑谷)


◆耳より情報◆


柏木さんたちが愛情込めて育てた”ボタンの里のみつ芋”が、この夏、ファミリーマートからアイスクリームになって発売されます。販売はなんと「ファミリーマート松江江島大橋店」のみ! 試験的な販売になりますので数量も限定だそうです。興味のある方、大根島LOVE、中海LOVEの方は是非! 発売は8月中旬より。


001-04_柏木氏編_ボタンの里のみつ芋

柏木さんの活動に興味を持たれた方がおられましたら、是非、自然再生センター事務局(0852-21-4882)までご一報いただければお繋ぎいたしますので、お気軽にお問い合わせください。


001-05_柏木氏編_まとめ

◆柏木利徳さんプロフィール◆


1955年3月、大根島(島根県松江市八束郡)生まれ。前職は武田宝石店(鑑定士)。現在は、農業・漁業を営みながら「ウィーラブ大根島プロジェクト」の各種事業の先頭に立って、大根島の一次産業の復興に意欲的に取り組む。好きな音楽は松居慶子、吉田拓郎、中島みゆき。


001-06_柏木氏編_プロフィール
関連するサイト:
大根島産直市FaceBookページ:https://www.facebook.com/daikonshimasanchokuichi
ブログ畑爺の時々野良日記:http://blog.goo.ne.jp/hatakejijii

カテゴリー:水辺の挑戦者たち

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