認定NPO法人 自然再生センター

活動紹介

中海浚渫窪地の環境修復事業

~湖底をきれいにする、それは恵みの中海を取り戻したいから~

この事業は中海自然再生協議会の実施計画のひとつ、「浚渫窪地の環境修復事業」に基づいて実施しています。浚渫窪地とは、干拓・淡水化事業や高度経済成長期の陸地造成の際に、湖底の土砂を掘り出した後に出来た深掘り跡のことで、浚渫窪地は中海の中でも特に酸素がなくなりやすい場所になっています。中海の東~東南沿岸にかけて、中海の面積(86.79㎢)の1割に及ぶ約8 km2(体積として3,000万m3)もの浚渫窪地が残されています。


出典:国土交通省中国地方整備局出雲河川事務所(「浅場造成」パンフレット)
図1 昭和29(1954)年の湖底地形(左)と現在(右)の湖底地形
※平成14年発行海図等より作成


出典:環境省環境研究総合推進費B-0804(2008~2010)
図2 浚渫窪地位置

酸素少なくなるとヘドロが溜まり、生物にとって有害な硫化水素が発生したり、リンやアンモニアなどの富栄養化に係わる物質が溶出したりします。


図3 浚渫窪地の模式図

そのため、この事業の目的は、酸素が少なくなったことによって発生する硫化水素やリン、アンモニアなどの汚濁物質を減らし、中海の水質改善とゴカイや二枚貝などの底生生物の保全につなげていくことです。

2009年に中海自然再生協議会と環境省専門部会の承認のもと、中国電力㈱の協力を得て、「石炭灰造粒物(通称Hiビーズ)」で浚渫窪地に溜まったヘドロを覆う実験(覆砂実験)をスタートさせました。この実験により、浚渫窪地内の湖底の酸素がなくなる速度が遅くなり、リンやアンモニアなどの栄養塩の溶出や、硫化水素の発生が減少しました。


図4 覆砂実験の効果

このことにより、2013年以降に同様の実験を複数回実施しました。

図5 Hiビーズ施工の様子

その結果、浚渫窪地内の水質が改善されるなどの効果が認められ、場所によっては、限定的ですが、生物が生息できる条件を取り戻せる可能性も見出されました。しかし、全面覆砂は短期的には大きな効果を発揮しますが、長期的には徐々に効果が低下することもわかりました。


図6 長期的に見た全面覆砂の問題点

現在は、これらの効果を持続させるための覆砂方法について探っており、さらに今後、実際に埋め戻した場合の周辺環境への影響についても調べていきます。


図7 長期的な効果の必要性


図8 長期的な効果持続のための覆砂案

水上からは見ることのできない湖底の問題は、なかなか一般の方に伝わりにくく、理解を得るのが難しいのですが、中海の自然を取り戻すためには避けて通れない課題です。時間も費用も多大に必要とするこの課題に、私たちは継続して取り組んでいます。


※中海の浚渫窪地の特徴
中海の浚渫窪地は自然の湖底より3~7 m程度深くなっています。そのため、窪地湖底の塩分の高い水(=重たい水)は沈んで停滞し、塩分の低い表層の水とほとんど混ざらないため、湖底には酸素が供給されず窪地内は酸素がなくなりやすくなっています。さらに植物プランクトンの死骸をはじめとする有機物が溜まりやすく、堆積した有機物の分解には大量の酸素が消費されています。酸素がなくなると、汽水域においては高い毒性を持つ硫化水素の発生要因となり、また有機物やリン酸・アンモニアなどの栄養塩の溶出を促します。特に、小規模な浚渫窪地の水は簡単に入れ替わらないため、夏季に発生した栄養塩や硫化水素は窪地内に蓄積し、高濃度になります。

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